『乗合い船 初挑戦ストーリ』

以下は私が初めて「乗合船」に乗った時の様子です。
まわりに船釣りをしている人がいないもので、
1人で、しかも飛び込みで船宿に行き、カサゴの船に乗ったのです。

かなり下準備はしましたが、けっこう度胸いりましたよ。

毎夜、雑誌「東海釣りガイド」の古澤さんの記事を、
何度も何度も読み返し、
学科100点実地0点の状態でした。

もちろんノンフィクションです。



乗合い船 初挑戦ストーリ
1995年12月23日(土)、午前5時15分、
意を決して知多師崎の昭徳釣船の戸を開けた。

実は前日から船宿に電話を入れ、策を練っていた。
「明日、乗り合い船に乗りたいのですが。」
「まだ、空いてますからどうぞ。」
「波はどうですか?実は船に弱いのです。」
「海だから、波は年中有ります。」
「波の程度を知りたいのですが?」
「波がどうでも、船はプカプカ浮いてるだけです。」

話にならないので、現場で決める事にした。

船宿のおかみさんは予約をすることを薦めてくれた。
しかし、船に弱いため、
明日の天候しだいでは「乗れない」可能性があることを説明し、
飛び込みで行く事を伝えた。

そして、当日。

「カサゴの船に乗りたいのですが・・・、」
「今日は空いていますよ。」
「船に弱いので波が心配で・・・。」
「今日は風もなくいい天気ですよ。波も無いですし。」

誰も乗ると言ってないのに乗船証(?)を渡される。

料金6000円、貸し竿代500円を払う。
仕掛けとオモリ、氷をもらい、駐車場に案内される。
船に乗り込み、貸し竿を中乗りさんよりもらう。

酔い止めの薬を飲み、両手首に酔い止めバンドを巻く。

両隣の釣り人に「初めての船釣り」であることを告げ、
迷惑をかけるかも知れないのが、
その場合は許してもらえるように初めから謝っておく。

定刻の午前7時、モヤイが解かれた。

「今日はアジを狙ってからカサゴに移ります。」

船長の今日の予定の説明が船内に続く。
中乗りさんが餌のアミエビ、コウナゴを配る。
約45分後、答志島近辺の海域に着く。

天候は晴れ。北風少々。
船は北風と波を受け、時に大きく揺れる。

「波は無いって話だったのに・・・。」

もはや手遅れであった。
胸のあたりが「ムカムカ」しだす。
気分が悪くなってきた。

ガマンしつつ、マキエカゴにアミエびを入れる。

「初めて下さい。」

船長の合図で釣り客は一斉に仕掛けを入れる。

誰も、何も釣れない時間が続く。
釣り上がるのは「目」だけで、「魚」は上がらない。
船長は船の移動を告げる。

場所を移動した。
仕掛けを入れる、コマセを振る、竿先の震えが手に伝わる。

リールを全力で巻く。

アジが2匹ぶら下がっている。

手をのばし、つかもうとしたら・・全部落ちた。
もちろん海に。

「えーアジはね、口が弱いからね、
 リールはゆっくり巻いてね。
 それとね、
 すぐにリールを巻かないでね、
 少し待って追い食いさせてね。」

船長よりのアドバイスが船内に流れる。

船長と目が合った。
アドバイスの相手がわかった。

この後アジを5匹ほど取り込む。
数回の場所移動の後、仕掛けをカサゴ用にチェンジ。

60号のオモリは一気に海底へ滑り落ちる。

底取りをする。サソイを繰り返す。当たりを待つ。
穂先にアタリを感じる。

軽く合わせる。
リールを巻く。
15p前後のカサゴが2匹ぶらさがっている。

10時過ぎ、風、波ともやや強くなり、船体が揺れだす。

数回の場所移動後、当日一番のポイントへ着く。船長が言う。
「水深60メートル」

船は流し釣りを繰り返す。

「70メートルも有る」
リールのカウンターを見ていた隣りの客が言う。

船上は大オマツリ大会で大にぎわいとなる。

午後12時30分、沖上がりの時間となる。
海水を汲み上げ、手を洗う。

「魚屋でもやるか!」
クーラーを覗いた助手さんが笑って言った。

午後13時30分、港に帰着。

堤防で、おかみさんがお茶を入れて待っている。
菓子とハンペンも有る。
お茶を飲み、ハンペンを食う。

「酔いませんでしたか?」
「酔うことを忘れていました。」
おかみさんが問いかけに対しての、これが正直な返答だ。

丁寧に礼を言い、帰路につく。
アジが5匹、カサゴが50匹以上の釣果であった。

釣りの途中で釣り物が変わった場合は、船内で無料で仕掛けが配られます。
(1セットのみ無料、切った場合は船内で購入)

乗船前から釣り物が変わることがわかっていれば、受付時にもらえる。